Studio OneはPreSonus社が開発したDAW(音楽制作ソフト)で、2022年7月現在のバージョンは5。Studio OneにはPrime(無料版)、Artist(機能制限版)、Professional(最上級版)という3つのグレードがある。DAWやStudio Oneの基本的な情報は前回の記事で書いた。
DAW/Studio Oneってなんだろう。 ~ kamoshakeh music
これからDTMを始めようという方には、「Studio Oneが気になるけど、結局どのグレードにすれば良いの?」と悩む人もいるはず。いや、DTM経験者(自分)でも理解できていないことが多い。無料版から始めるべきか、最初から有料版にしておいた方が得策か、有料版にしてもArtistで良いのかProfessionalにすべきか…。
この記事では、そんな悩みを解消する助けになればと願い、Studio Oneユーザーの視点からStudio One 5の各グレードを比較し、誰にどのグレードが適切か考察する。
⇒DTM機材まとめ記事:DTM必需品・おすすめ機材まとめ ~ kamoshakeh music
Studio One グレード比較
細かい比較は公式サイトにある。
PreSonus | Studio Oneエディション別機能比較 - powered by MI7
違いはいろいろあるが、専門用語が多くて初心者に優しくないので、以下で筆者が重要だと考えるポイントを挙げる。
Prime vs Artist
まず、PrimeとArtistの比較。税込価格は、Primeが無料、Artistが11,000円(学生・教育関係者限定のアカデミック版は6,600円)。大きな違いは以下の4つ。
- 内蔵音源(インストゥルメント)の種類の多さ
- 内蔵エフェクタの種類の多さ
- 外部プラグインの使用可否
Primeの音源とエフェクタは最小限で、外部プラグインも使えない。ひと通り楽器はそろっているが、音質や奏法の面で不足があり、打ち込みっぽくなってしまう(ピアノだけなら良いかもしれない)。エフェクタも基本的なものはそろっているが、あまり多くのことはできない。とりあえずDTMやStudio Oneを試したい、簡単なデモ音源を作るだけという人ならPrimeでも十分だが、配信をしたり多くの人に聴いてほしいなら不十分。いや、よっぽど作詞作曲編曲がうまくて、打ち込みはせずバッチリ録音して、音量と定位の調整だけでほとんど完成するならPrimeでも事足りるが、それはもはやプロの業。
Artistになると、エフェクタはかなり充実する。Analog DelayやFat ChannelなどPrimeにないアナログ系エフェクタもあり、よりリアルさを追求できる。インストゥルメントの音質や奏法はPrimeとあまり変わらないが、外部プラグインを使えるのでカバーできる。ちなみに、「Artistは外部プラグインを使えない、使うにはアドオンを買う必要あり」というブログ記事なども見かけるが、それはStudio One 4(正確には4.4だったと思う)までの話。バージョンアップにより、Artistも外部プラグインをサポートするようになった。この違いはかなり大きい。
Artist vs Professional
次に、ArtistとProfessionalの比較。税込価格は、Artistが11,000円、Professionalが42,900円(学生・教育関係者限定のアカデミック版は24,200円、他DAWから乗換限定のクロスグレード版は35,200円)。Professionalは使ったことがないが、いろいろ調べた上で主な違いを挙げる。
- インストゥルメント、エフェクタの種類の多さ
- オーディオ・エンジンのbit数(Artist 32bit、Professional 64bit)
- Melodyne Essential(ピッチ補正機能)の有無 ※Artistは30日間の体験版のみ
- プロジェクト・ページ(マスタリング機能)の有無
- ショー・ページ(Liveに特化した機能)の有無
- スクラッチパッド(アレンジを複数比較する機能)の有無
- スコア・エディター(楽譜作成機能)の有無
- コード・トラックとハーモニー編集機能の有無
なじみのない用語が並ぶが、今はあまり気にせず読み進めてほしい。
Professionalはインストゥルメントとエフェクタがさらに増え、インストゥルメントの音質は良さそうだが、やはり奏法の制限があるので、特にギターなど奏法が重要な楽器は録音するか外部プラグインに頼る方が良い。エフェクタもあまり差はなく、外部プラグインで十分カバーできるし、無料でも高品質な外部プラグインはたくさんある。
オーディオ・エンジンは音質面の違いで、Professionalの方が倍精度で音の違いを表現できるのだが、実は32bit対応の機材で録音をしないと、64bitオーディオ・エンジンを生かせない。しかし、32bitで録音できるオーディオインターフェイス(マイクとPCを接続する機材)は今のところあまりなく、手が届きやすい価格だとStudio OneのライバルDAWであるCubaseの開発元、Steinberg UR22Cくらいしかない。確かに32bit録音だとこれ一択の良い製品なので、紹介しておく。詳しくはこちらの記事で解説されている。32bit(整数)オーディオ/64bit floatオーディオエンジンとは?|Cubase 10 使い方
オーディオインターフェイスについては別記事で解説:DTMにオーディオインターフェイスは「必要」じゃないけどおすすめなので紹介。 ~ kamoshakeh music
ただ、個人的にはオーディオ・エンジンの違いが影響するのはかなり高次元の緻密な世界であり、一般的なDTMerにとってはそれよりもマイクや録音場所、歌唱演奏技術の影響が多大だと思う。また、ヘッドホンやスピーカーもそれに見合った高級品を使わないと違いが分からないのではないだろうか…。
Melodyne Essentialはボーカルの音程とタイミングを細かく調整できる強力なプラグインだ。歌声を録音・修正する場合はかなり役立つ。ただ、これは外部プラグインなのでArtistでも追加できる。買うと1万円ほどするが、Professionalにアップグレードするよりは安いし、他の外部プラグインを買うとおまけで付いてきたりすることもあるので、体験版を使ってみて良かったら検討して良いと思う。
その他、機能面での違いは多いが、ほとんどが「便利機能の有無」であり、それらが無くても何とかなる。作業効率の向上以外でProfessionalを使う決定的な理由はあまり無いように見える。確かに、スクラッチパッド、スコア・エディター、コード・トラックといった機能は強力で、使いこなせばかなり時短になるはずだが、使わない人にとっては宝の持ち腐れになる。
結論: 誰がどのグレードにすべきか
まとめると、各グレードはこんな人に向いている。
- Prime: DTMやStudio Oneを試してみたい人、デモ音源を作りたいだけの人
- Artist: 趣味で音楽を作る宅録DTMer
- Professional: 各種便利機能を使いこなしたい人、高級機材をそろえて本気で音楽制作をしたい人
つまり、多くの人にはArtistで十分という結論になる。もちろんProfessionalを買う余裕があればそれで良いが、価格差ほどの違いは宅録DTMerには実感できないのではないかと思う。それより他の機材への投資に回した方が良い。ArtistからProfessionalへのアップグレードはほぼ差額分の3万3千円でできるので、Artistから始めても損はない。
また、ArtistはPresonus製のオーディオインターフェイスを買えばおまけで付いてきて、実質無料で手に入るので、コストパフォーマンスが非常に高い。これについては別記事で紹介する。
最後に、Studio Oneの購入はPresonusの日本語公式サイトを運営するMI7の販売サイトであるMUSIC EcoSystemsがベストだと思う。毎年11月末ごろのブラックフライデーセールで30%から50%の割引になるからだ(年によって割引率が異なる)。待てるならセールを待った方がお得。販売ページのリンクを以下に貼っておく。
- Studio One 5 Artist
- Studio One 5 Artist アカデミック(学生・教育関係者限定)
- Studio One 5 Professional
- Studio One 5 Professional アカデミック(学生・教育関係者限定)
- Studio One 5 Professional クロスグレード(他DAWからの乗換限定)
- Studio One 5 Artist から Professional へのアップグレード
⇒DTM機材まとめ記事:DTM必需品・おすすめ機材まとめ ~ kamoshakeh music
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