約2か月ぶりの更新なのにこんなタイトルで申し訳ないが、最近この事で(自分の家庭内だけ)ちょっとした騒ぎになったので記録。DTMerの心得として知っておいてほしい内容だ。
左耳が聴こえにくい?
2022年8月のある日、僕は飛行機に乗っていた。離陸後、スマホにイヤホンを挿し、お気に入りであるJack Johnsonのアルバム"Sleep through the Static"を再生した。するとすぐ、異変に気付いた。
あれ…ボーカルが右に寄ってる…?
おかしい。彼は常にボーカルをセンターに置いていたはず。イヤホンを片耳ずつ付けて左右聴き比べてみると、確かに右の方がボーカルが大きい。というか、ドラムもベースもすべて右に寄っている。アンバランスで気持ち悪い。前に聴いた時はそんなことなかったので、こちらの問題だ。
もしかして、左耳が聴こえにくくなってる…?
飛行機に乗っているから、気圧の関係で耳がおかしくなっただけかもしれない。その時はそう考えて、また地上でゆっくり聴くことにした。
そして着陸後、帰宅して落ち着いてから改めて聴いてみた。でもやっぱり右に寄っている。まだ飛行の影響が残っているのかもしれない。とりあえず日常生活に支障はなさそうだし、また明日聴いてみよう。
翌日も、その翌日も聴いた。でも変わらず右に寄っている。さすがにおかしい。ネットで検索してみた。「片耳 聴こえにくい」と。すると出てきたのは…。
恐怖の突発性難聴
そう、「突発性難聴」というワード。「突然、左右どちらか一方の耳の聞こえが悪くなる病気(耳鼻咽喉科 日本橋大河原クリニック)」「原因不明(おおた耳鼻咽喉科)」「発症から2週間経つと神経変性が起こり、治らなくなる(サワイ健康推進課)」「3人に1人は完治、1人は回復するが難聴が残り、もう1人は治らずに終わる(済生会)」そんな記述が並んでいた。ゾッとした。
もしこれが改善しなかったら、もう音楽制作はできないのでは…?
最悪、日常生活にも支障が出てきたら、補聴器が必要…?
すぐ耳鼻科へ行かねば。でも悪いことに、その時旅の疲れからか熱が出ていて、新型コロナの疑いがあったので外出はできなかった。検査の結果コロナは陰性だったが、熱はなかなか下がらず、結局回復まで1週間を要した。早く耳鼻科へ行きたかったが、回復したのが週末だったのでさらに2日待つ必要があった。タイムリミットの2週間がもうすぐそこだ。治らなかったらどうしよう。恐怖に襲われた。
いざ耳鼻科へ
そしてようやく耳鼻科へ。問診票に「左耳が聴こえにくい」と書き、不安でそわそわしながらしばらく待つと、診察室へ呼ばれた。「こんにちは!」と女性のお医者さんが明るく迎えてくれたが、こちらは死の宣告を待つ囚人のような気分だった。彼女は問診票を見て、「左耳が聴こえにくいんですね。さっそく左耳を見てみましょう!」と僕をベッドに横たわらせた。屠られる子羊。ペンライトで左耳を照らしてのぞき込むお医者さん。その横で見ている女性は、たぶん助手だろう。耳がより聴こえない気がしてきたし、目もかすんできた気がした。そして、さっと左耳の中を見た彼女が一言。
耳垢ですね!
えっ?思わず聞き返した。すると彼女はもっとはっきりと繰り返した。
耳垢ですね!!!
その明朗な声は、診察室の外にいた妻にもはっきりと聞こえたほどだった。僕は驚きのあまり何も言えず、ただ動揺していた。お医者さんは気にせず、「鼓膜のところに溜まってるので、取ってみます!痛かったら言ってください!」と言って何やら器具を取り出した。
その直後、ズゴーーという吸引音と共に鼓膜を何かでつつかれる感触が左耳に。そして、痛みが走った。鼓膜が引っ張られるような痛み。「痛い!」と思わず声を挙げた。彼女はすぐ手を止めて言った。「痛いんですねー、ちょっと触っただけなんですけど…取るのは難しいかなー…。」いや、でもこのまま取らなかったら本当に耳垢が原因かどうか検証できない。もし突発性難聴だったら、ちゃんとした治療が必要だろう。もう時間は無駄にできない。そこまで冷静に考えられるようになっていた僕は、覚悟を決めて「いや、もう1回やってみてください、ちょっと痛かっただけなので」と提案した。すると彼女は嬉々として「じゃあもう1回やってみます!!すごく痛かったら言ってくださいね!!」とすぐに作業を再開した。
ズゴーーという音と鼓膜をつつかれる感触。そして痛み。少し我慢してみた。すると、何かが剥がれた感覚があった。お医者さんは「あっ、少し取れました!!でもまだ残ってるのでもうちょっと待ってください!!」と言って続ける。あとはすぐだった。「全部取れました!もう大丈夫です!!」と言われ、起き上がると、助手らしき女性が「これが取れたんですよ~」とティッシュの上に乗せた茶色の物体を見せてくれた(写真を撮っておけば良かったが、忘れてしまった)。これが耳垢…でかい…。砕けたチョコみたいだった。
※写真はイメージです。
お医者さんは満面の笑みで「どうですか?聴こえやすくなりましたか!?」と聞いてきたが、普通の会話では違いが分からない。「イヤホンで何かを聴いてみないと分からないです」と言うと、「じゃあ、待合室で何か聴いてみてください!たぶん耳垢が鼓膜に溜まって耳栓みたいになっていただけだと思います!もし治ってなかったら言ってください!」との返事。自信ありげだ。とりあえず従ってみよう。待合室に出て、さっそくイヤホンを使ってJack Johnsonを聴いてみた。すると…
変わらず右に寄っている…。治ってない…?
やはり突発性難聴なのか。妻は不安そうな顔をしていた。でも、片耳ずつイヤホンで聴いてみると、以前とは違うことに気付いた。
あれ…?これ、そもそも左のイヤホンから高音しか出てない…?
妻にも同じイヤホンで聴いてもらってみた。
「あ、左の音小さい。」
ということは…。妻のイヤホンを使ってみた。
ふつうに真ん中で聴こえた。
混乱と沈黙も束の間、受付に名前を呼ばれた。とりあえず行かねば。お会計ですと言って出された請求書には、1,000円ちょっとの金額が書かれていた。支払った。外に出た。妻と話し合った。つまり…
つまり
今回の事件の顛末は…
- 突発性難聴ではなかった
- 主な原因は、イヤホンの左側が故障したこと
- 主要因ではないが、左耳に耳垢が溜まって聴こえにくくなっていたことも事実
- 1,000円で耳掃除をしてもらった(健康保険適用)
- 以前より確かに左耳が聴こえやすくなった(と思う)ので良かった
- でも耳鼻科に行く前にまずはイヤホンをチェックしよう(違うやつで聴いてみるとか)
しょうもない話で申し訳ない。でも突発性難聴じゃなくて本当に良かった。DTMerは耳が命。何かおかしいなと思ったらすぐ耳鼻科へ行こう。突発性難聴の場合、治療が成功する確率についてはいろんな情報があり、本当のところは分からない。でも、早期の治療開始が重要であることは確かだろう。自然治癒はできない病気だが、ステロイド薬などを服用すると1から3週間程度で治療できるらしい。費用は薬代だけだとおそらく数千円から1万円程度。あまりないらしいが、入院が必要な場合は10万円以上(参考:EPARKくすりの窓口コラム)。治療期間もコストも比較的小さい病気なので、惜しまず治療しよう。治らないよりずっと良い。僕のようにただの耳垢かもしれないが(一応、「耳垢栓塞」というちょっと恥ずかしい病名がついていた)、それならそれで耳がきれいになって良い。
おまけ:耳掃除について
ところで、なんで左耳の鼓膜に耳垢が張り付くほど溜まったのだろう?その原因は、おそらく「耳掃除をしすぎたから」だ。
僕の耳垢は湿っているのだが、これは遺伝によるもので、日本人の約2割が湿った耳垢、残り8割が乾いた耳垢らしい(参考:【箱根ヶ崎耳鼻咽喉科コラム】耳垢がたまるのはなぜ?耳鼻科専門医が教える耳掃除のコツとは?)。僕はこれまでこの湿った耳垢を取るのが気持ちよくて、週に数回綿棒で耳掃除をしていたのだが、これが良くなかったようだ。もう知っている方も多いかもしれないが、上記の箱根ヶ崎耳鼻咽喉科コラムから得た情報をまとめておく。
- 耳垢は殺菌作用があり、悪いものではない。
- 月に1,2回程度、外側の見える部分だけを掃除すればOK。
- 頻繁に耳掃除をすると、刺激から守るためにかえって耳垢が多く生産される。
- 耳の奥はデリケートで、綿棒で触っただけで傷つく恐れあり。奥に耳垢が溜まっている場合は耳鼻科へ。
耳掃除は、本当かどうか不明だが、欧米では「やってはいけない禁断の快楽」と呼ばれているらしい(参考:神林耳鼻咽喉科医院)。確かに。耳掃除は気持ちよいが、頻繁にしすぎると耳垢の殺菌作用・自浄作用を阻害し、逆に耳垢を過剰発生させてしまったり耳垢を奥に押しやってしまったりする。ほどほどにしよう。
おわりに
というわけで、今は元気に音楽制作に取り組んでいる。このブログは飽きたわけではなく、一度音楽制作を始めると他のことを考えられなくなるので気が回らないのだ。音楽制作の合間に、ブログを更新していきたい。読んでくださっている方、ありがとうございます。
Comments